十五夜

 
 

 
近所のケーキ屋さんで
十五夜だんごを買ってきて、
窓辺に供えました。
 
小さなフラワーアレンジメントと
冷蔵庫の中で見付けた
梨、洋なし、ぶどうも添えて
供えました。
 
マンションの小さな窓から見る月は
なんだかとてもちっぽけで
頼りなさ下でしたが、
それでも家族で共に過ごす十五夜
それなりに楽しいものでした。
 
 
夜半を過ぎ、
満月は天頂を廻って、
東側のベランダに
明るい月光を落とすようになりました。
 
今宵は街も、
いつもより少し静かなようです。
時折、過ぎる車の音と、
線路の上をゆっくりと移動する
保線車両の音が、
まるで草むらから聞こえる
虫の声程度に耳に届くだけです。
 
 
家族はみんな
寝静まってしまったのに、
僕だけ目が冴えて、
ひとり、ベランダで感傷に耽っていました。
 
眼下に広がる、
僕達家族が住む街のこと、
家族のこと、
 
昔、子供の頃、十五夜に供えた
ススキや果物のこと、
 
昨日、出張帰りの飛行機の窓から見た
満月のこと、
雲間から見下ろした街灯りのこと、
 
そこに住んで居るであろう
見ず知らずの多くの人々のこと、
 
とりとめもなく、
月明かりの下で考えていました。